科学的に正しかった『失敗は成功のもと』で組織を成長させよう

何か新しいことを始めるとき、ほとんどの人は「○○ やり方」のように成功する方法を検索します。ですが、本当に調べるべきなのは「失敗例」です。先人と同じ失敗を繰り返さないことにより、早く成功できる可能性が高まります。

自分の失敗経験からも、活かせることは多いです。「失敗したから諦めよう」ではなく、「失敗した分だけ成功に近づける」というマインドを持ちたいですね。よく言われる「失敗は成功のもと」は科学的にも正しいことが分かってきています。

失敗を科学する

最近、「失敗学」という分野が学術やビジネスの分野で注目されています。書籍『失敗学のすすめ』 で有名な東京大学の畑村洋太郎名誉教授が提唱した学問分野で、失敗の根源を分析しようという学問です。

企業や芸能人の不祥事について、テレビで謝罪会見を目にすることはしばしばあります。ですが、起きてしまった失敗に対し、責任の追及のみに終始し、原因を究明したり、改善に活かしたりするところまで行かない事例が多いです。

失敗を論理的に分析し、その後の業務改善や安全性の向上に役立てよう、というのが失敗学。経営の視点から安全工学を利用するような学問です。まさに「失敗は成功のもと」を基盤にした学問と言えるでしょう。

マウスによる失敗の実験

実際に、マウスを使って「失敗は成功のもと」が正しいのか検証した実験があります。ゴールにエサを置いた迷路を、マウスに解かせる実験です。

エサにたどり着くための経路は最短距離から遠回りの道まで7種類ありますが、最終的に14匹のマウスすべてがエサまでの最短距離を見つけることができました。しかし、最短距離を見つけるまでの時間には3〜18日とマウスによって差があったのです。

最短距離を見つけるのが早かったマウスには、実験初期に失敗を繰り返した特徴がありました。行き止まりに入ったり、何度も同じ道を通ったり、とても最短距離とは言えない「失敗」を繰り返したマウスの方が、最終的には早く最短距離を見つけることができたのです。

失敗は応用力を養う

実験には続きがあります。最短距離の道を通れないように道を塞いでしまった場合、「最短の次に短い距離」でゴールにたどり着く道を早く見つけられたのは、最初に失敗を繰り返したマウスだったのです。

あまり失敗を繰り返さなかったマウスもエサにたどり着くことはできましたが、「最短の次に短い距離」ではなく、「遠回りした道」しか見つけられませんでした。この実験で、最初の失敗の回数は「ゴールまでの最短距離を見つけられるか」ないしは「早く最短距離を見つけられるか」に関わることが分かりました。

マウスで示された「失敗は成功のもと」

最初にたくさん失敗をしたマウスほど、迷路全体を歩き回っていたことになります。そのため、効率良い経路を早く見つけることができたのではないか、とこの実験は解釈されています。

現実の社会でも、ある仕事で失敗してしまった人が、別の仕事で挽回どころか他者より大きな成果を出している、といった場面に遭遇したことはありませんか。もちろん本人の見返したいモチベーションもあるので、すべてが失敗経験のおかげとまでは言えませんが、失敗した人の脳内には回り道した分だけ多くの情報がストックされていると考えられます。

ビジネスでの失敗の活かし方

上記ではマウスの実験を例に失敗による知識のストックについて解説しました。畑村教授が執筆した『失敗の科学』では、具体的にビジネスの現場で失敗が成功に活かされた事例が載っています。失敗から学んだ成功例として航空業界が、まだ失敗からの学びが足りていない例として医療業界が取り上げられています。

失敗から学んで成長した航空業界

今でも、飛行機に乗るのが怖いと感じる方は多いですよね。「なぜあんなに大きな鉄の塊が何時間も宙に浮いていられるのか理解できない」といった理由がその多くを占めているでしょう。確かに、20世紀初頭の飛行機で移動ができるようになってすぐの頃は、米陸軍パイロットの5割以上が航空事故で命を落としていたそうです。

多くの人の命を失った経験から、航空業界は「どのような操作で人が命を落としたか」を学んできました。大きな代償ですが、失敗が活かされているからこそ、私たちはほとんど事故無く旅行を楽しむことができているのです。実際、2013年には世界で30億人もの人を乗せて民間の航空機が飛びましたが、事故で亡くなったのは200人強でした。

一般的に考えれば、命を落とすほどの事故を起こしてしまったパイロットには非難が集まるので、「自分の非を認めたくない、責任転嫁したい」と思ってしまうもの。また、組織によって事故の直後に処罰され、弁明できないケースもあります。

ですが、航空業界ではミスを起こしてから数日以内に報告書を提出すれば処罰されない、といったパイロットを守る仕組みがあるそうです。このような仕組みがあれば、なぜその失敗が起きたのか、正しい情報を業界で共有することができます。

医療業界でも応用できるのでは?

『失敗の科学』で航空業界の反対の例として挙げられているのが、残念ながら医療業界です。米医学研究所のレポートによると、アメリカでは毎年4.4~9.8万人が医療過誤によって死亡しているのだそうです。

医療の世界でも、1つのミスが命に関わる特性があるため、ミスを認めた医師は大きな非難にさらされてしまいます。厳しい処分もあるでしょう。非難されると分かっていれば隠ぺいに走ってしまう人もいるかもしれません。

本来、なぜ失敗したのかをみんなで共有しなければならないのに、医療業界にはそのような枠組み作りが十分ではないのでしょうか。航空業界の事例のように、失敗から学んで医療過誤の削減に繋げる工夫が必要かもしれません。

まとめ

医師もパイロットも経験を積んだプロフェッショナルの仕事ですが、1つのミスが命取りになる大変な仕事です。だからこそ同じミスは二度と許されないのですが、失敗を知識としてストックする仕組みは、医療業界と航空業界で異なることを見てきました。

成功例からだけでなく、失敗からも学ぶことで、より広い知識を手に入れることができます。最短距離の道を早く見つけられたマウスのように、「失敗は成功のもと」という考え方も重要ではないでしょうか。

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