【連載第4回】世間が考える医師の常識とは-医師の常識・非常識

医師たちの中では医師の常識というものは時代の流れに伴い大きく変化をしてきたかもしれません。しかし、それは世間の考える医師の常識とはまた少し異なっているかもしれません。医師の常識と世間の考える医師の常識について考えていきます。

医師の常識は社会の非常識?

医師が病院の中と外で常識がかけ離れていると思われるのは、金銭感覚が最も多いようです。買うものが高くても安くても、医師以外の人たちから言われるのは「さすが医者」。
それがその医師にとって、選び抜いた品であったとしても、あるいはちょっとおしゃれな店でお酒を飲むだけだとしても、子供のために安いおもちゃを買ったとしても、やはり言われる言葉は「さすが医者」となるようです。
実際のところ、相手の方が高級そうなものを身に着けていたとしても、「さすが医者」と言われててしまう背景には、やはり金銭感覚に関する世の中の偏見があるのかもしれません。

しかし、これには世間的な医師へのイメージ(つまり偏見)だけではなく、自らの金遣いの荒さを、SNSなどを通じて世間に公表する医師もいるから、という背景もあります。
そのため、医者自身がそんなにお金を使わなかったり、今の医師の懐事情は世間と変わらなかったりという事情であっても、社会的、世間一般的に見れば「医者の金銭感覚は狂っている」と思われているようです。

例えば、厚生労働省が行っている「平成 30 年賃金構造基本統計調査」によると、40歳から42歳までの平均賃金は36万円程度、12か月分では430万円あまりです(賞与を除く)。
一方で、医師の年収についてはさまざまなメディアで報じられていますが、1,500万円やそれ以上となるケースも少なくありません。
また医師の常識として世間が見定めている、もっとも分かりやすい例が車です。例えば、軽自動車に乗れば「もう少しいい車に乗れば?」と言われ、外車に乗れば「金銭感覚が違う、さすが医者」ともいわれてしまいます。
確かに外車に乗っている医師は少なくありませんし、世間から見ても医師イコール外車というイメージには強く結びつくようです。とはいえ、やはり生活スタイルによって外車を好まない、あるいは外車だと生活がしにくい環境もありますから、医師だからといって必ずしも外車に乗るわけではないというのが医師側の理由なのですが、それはなかなか社会には理解してもらえないようです。
ただ、自治体などによっては医師であることによって車を購入する際に優遇措置を受けたり、サービスを受けたりすることができる場合もあるようです。収入云々ではなく、こういったサービスを利用して外車を購入するという方は、少なからずいるのかもしれません。
しかしながら、医師自身がどう考えていようと、どのような生活スタイルで過ごしていようと、やはり世間の「医者だから~」という視点は、なかなか変わらないようです。

「医師が一番偉い」は古い考え?

一昔前まで、病院の中で最も偉いのは医師、という考え方をしている医師は多かったのではないでしょうか。看護師や他の職種はあくまでも「医師の手伝い」というようなこの考え方。現在においてはあり得ない考え方ではありあすが、この考え方を変えずに医師業務を続けているという方も、実はゼロではありません。
平成20頃には、厚生労働省がチーム医療を推進。その方向性を取りまとめ、平成23年頃には各職場への通達をしています。そのため、現在ではチーム医療は当たり前であり、医師を頂点としたピラミッドは崩壊し、みんなで手を組んで医療を提供していくということは当たり前になっています。さまざまな職種が連携することで自分の専門外の部分を補うことができ、より患者の回復を手助けすることが可能になるという考えのもとで動いています。この考え方が理解できずにいれば現在の医療現場、特に大学病院や一般病院においては従事していくことさえかなり難しくなっています。
また、医療界においてもう1つ医師における変化が、医師のキャリア形成です。医師のキャリア形成は、今まで大学医局と関連病院との間の人事ネットワーク (医局ネットワーク) を中心に行われてきました。 このネットワーク上の病院に勤務医として働きながら5年程度の間隔で転職を繰り返して技術を向上させ40代~50代で開業といったところだったでしょう。これよりも早く開業すれば知識不足、技術不足、世間知らずといった言葉を浴びせられていた時代があったようです。
ですが、近年では社会全体の影響を受けて、30代での起業(開業)も多くなっています。若いからこそ、若いなりの知恵や関わり方を通し、ヒットする開業医も少なくありません。さらに、今までは高卒で医科系の大学に入り、国家試験を受けて研修医となるというレールともいうべきものがありました。しかし、今では40代で医科系大学に入り、医師免許の取得に励むという人も少なくありません。今まで常識であった医師の働き方、医師のなり方はもう現代においては医療業界的にも、社会的にも非常識となってしまっているのです。

まとめ

医師と社会とのずれは医師が思っているよりも深く、中には医師が思っていないにもかかわらず、今までの慣習や一部のメディアへの発信によって、医師の常識が勝手に作り上げられているものもあります。いずれにせよ、簡単には医師と社会の常識が相入れることは難しいのでしょう。まずは自身の中で、医師と社会の常識の溝を少しでも埋めていくことが、これからの医師には必要なのかもしれません。

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