ハラスメントという罠に落ちないために

近年ハラスメントという言葉が広まり、さまざまなハラスメントを耳にするようになりました。しかし、ハラスメント一口に言ってもいろいろな種類があり、自分に自覚がなくてもハラスメントの罠に落ちてしまうことも。
では、医師としてハラスメントの罠に落ちないためには、どう立ち振る舞っていけばよいのでしょう。

世の中にたくさんある「ハラスメント」

まず、ハラスメントの定義について考えていきましょう。ハラスメント(Harassment)とはいろいろな場面での『嫌がらせ、いじめ』のことを指しています。他者に対する発言・行動などが本人の意図とは関係なく、相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたり、不利益を与えたり、脅威を与えた場合にはハラスメントという扱いになります。発言や行動を行った本人ではなく、発言や行動を受けた側の捉え方が重要となります。
ハラスメントの中でも、昔からよく耳にしたであろうものがセクシャルハラスメントで、相手が不快に思い、相手が自身の尊厳を傷つけられたと感じるような性的発言・行動のことをいいます。
他にもハラスメントはさまざまな種類がありますが、開業医に該当する可能性があるハラスメントとしてはドクターハラスメント、モラルハラスメント、パワーハラスメントなどでしょうか。

ドクターハラスメントとは、医師や看護師をはじめとした医療従事者が、患者や患者家族に対して心ない発言や行動をすることをいい、これは自分及び雇用したスタッフが患者に対して起こすリスクのあるハラスメントです。
モラルハラスメントとは、言葉や態度、身振りや文書などによって、働く人間の人格や尊厳を傷つけたり、肉体的、精神的に傷を負わせて、職場を辞めざるを得ない状況に追い込んだり、職場の雰囲気を悪くすることで、これは雇用者に当たる開業医が起こす可能性の高いハラスメントです。
パワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為と定義されています。
これらは、開業医本人が意識していなくても、クリニックという狭い社会の中では、十分に起こしうる可能性のあるものです。

他にも近年注目度が高まっているハラスメントが、妊娠、出産等に関するハラスメント及び育児休業等に関するハラスメント、いわゆるマタニティハラスメント(以後 マタハラ)です。これは、妊娠・出産したこと、あるいは妊娠・出産、育児休業、介護休業などに関わる制度を利用する人に対し、言葉や行動などで就労環境や就学環境を害することを指します。
マタハラは、業務分担や安全配慮等の観点から「業務上の必要性に基づく言動によるものはハラスメントには該当しない」とされてはいるものの、特に男性医師や出産・育児を経験していない女性医師の場合は、業務上の必御要請に基づく言動などでも、マタハラといわれてしまうかもしれません。
このように、近年はさまざまな言動が「ハラスメント」となってしまうことがあり、特に意図せず発言したことが、立場によってはハラスメントと捉えられる可能性が、非常に高くなるのです。

開業ゆえの孤独?「責任」は自分が取る

これらのハラスメント問題が職場で起きた場合、最終的に責任を取ることとなるのは、開業者である医師となります。特に被雇用者となる看護師においてはさまざまな研究がなされており、多くの看護職が被害にあっていること、看護職がハラスメントを受けても看護職個人の問題とされることが多いこと、これらの問題に対して十分な対応が取られてこなかったことなどが分かっています。
ハラスメント問題が起こることにより職場の人間が離職すれば人手不足となるだけでなく、「ハラスメントを理由とする精神障害での労災保険の支給」を要請されるなど、法的措置を科せられる可能性もあります。特に看護師と医師の間でのハラスメントの場合、看護師の方が人数も多いため団体で訴えを起こされるなどという可能性も、決してゼロではありません。また、クリニックの場合は大病院などと異なり、間に入る中間管理職的な存在がないこともあり、ハラスメントであると誰かが声をあげれば十中八九、医師が悪者になってしまうことも有り得ます。
つまり、開業してからは特に、ハラスメントに対して細心の注意を払っていくことが望ましいと考えられます。
ハラスメントの問題を解決するプロセスは、説論、調停、措置申し立てとされています。
説論の段階で解決することができれば、大事になることなく、話が終わります。
しかし、スタッフから「これはハラスメントである!」と声が上がった場合には、この説論のうちに円満に解決することが望ましいでしょう。
また、ハラスメントとして提訴されないためには、施設のトップである開業医から全職員に対して、「ハラスメントは(院内で)取り組むべき重要課題であること」を発信し、適切なルールを設けておくことで、自分自身がハラスメントについて真摯に取り組んでいるという姿勢を見せておくことが必要となるでしょう。
ハラスメントを回避することは、医師自身が己の身を守ることにも、つながるのではないでしょうか。

まとめ

ハラスメントは、その時代の流れにより、次々と新しいものが出てきます。今後もこうした傾向が続くと予測され、ハラスメント対策は開業医が自分の身を守るためにも必要不可欠なものであると考えられます。
特に多くの女性を束ねなければならないという立場からも、開業した際にはハラスメント対策にもより一層力を入れていくことが望ましいのではないでしょうか。

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