自分の健康管理は万全ですか?

生活を営む上で資本ともなるのは健康。これは職業柄誰よりも医師が最も理解していることでしょう。しかし医師だからと言って自分の健康に最大限気を使えているかといえばそうではない方も多いのでは。今回は医師の健康について考えていきます。

医師の1割がうつ状態?

12人に1人の医師(8.7%)が抑うつ状態で、1.9%がうつ病。※1
このデータは、日本医師会が平成21年に勤務医にアンケート調査を行った結果です。この後、平成26年に施行された改正医療法により、医療機関の勤務環境改善が義務付けられたことが影響したのか、抑うつ状態の人は6.5%、うつ病の人は0.9%にまで低下しました。※1
しかし、勤務環境がある程度改善されても、依然として医師のおよそ15人に1人が「うつ状態」であるのが、現実です。特に休日数が少ない、当直が多い、当直中の業務が煩雑で睡眠時間が短いという医師に、うつ状態が認められています。
このアンケートは勤務医に対して実施されているもののため、うつ状態と医師の勤務状況の関係性が勤務医ならではのものが多いと思われるかもしれません。しかし、ここからは医師全体(開業医含む)が注目しておきたい内容となります。

医師のうつ状態を招いているもう一つの要因が、「クレーム対応」です。うつ状態とクレームの回数には相関関係が強くあるということが指摘されています。※1勤務医の場合、病院側がこのクレーム対応の対策をすべく、病院クラークなどを配置しています。しかし開業医の場合、クラークを配置する余裕が無いことも多く、クレームの受付窓口が看護師や医療事務でも、対応そのものは医師自身が行うことになります。患者と医師との距離が近いという診療所の特性、そして医師が最終責任者であるという特性上、医師が直接クレームを受ける頻度は、勤務医より格段に多くなります。その結果として、勤務医と同様、開業医もうつ状態に陥る可能性が高くなります。

また、もう1つ注目したいのが「誰かに相談しているかどうか」です。日本医師会の調査によると、自身の体調不良を他人に相談しないと答えた医師は2人に1人、53%ほどであるという調査結果が出ています。※1、2
医師が体調不良を他人に相談しないというのには、いくつかの理由が考えられます。一つは「自己治療できてしまう」ということです。特に精神分野においては自己にて薬を内服して自己治療をしていたという例が見られていました(法的に認められるかはともかく)。もう一つは「セルフスティグマ」という心理です。これにより自分のうつ状態を認めない、逃避するという人も多く、医療行動が遅れることにもつながっています。そしてもう一つは「守秘義務」です。自分の悩みを知られたくないという心理が、体調不良を他人に相談しないという状況を作っていると推測されます。※2
尚、多くの医師がうつ状態になるのは日本だけではありません。アメリカの医師は毎年300人余りが自殺をしており、その主要因がうつ状態であるといわれています。※2

参考:
※1 日本医師会 勤務医の健康の現状と支援のあり方に関するアンケート調査報
※2 精神科治療学会

医者の不養生?

次は身体の健康不良についてです。医者の不養生ということわざがあるように、医師は自分の健康状態に気を使っていない(いられない)人が多いのが現状です。医師という職業は勤務の性質上、睡眠不足に陥りやすく、さらにストレスや仕事における緊張感なども相まって、心だけでなく体にも不調をきたす医師が多く見受けられます。勤務医であれば病院側が適切な労働環境を整え、なるべく体と心の不調をきたさないようにと配慮されることもありますが※1、開業医ではそれを自分自身でやらなければなりません。
また、勤務医では健康診断も病院内で交代で受けることができますが、開業医の場合はどうでしょうか。多忙を極めていることもあり受療行動に移すことが難しく、自分の勤務ではない日に空いている医院を探す、夜遅くまでやっている医院を探すなどの手間がかかり※2、健康診断を毎年確実に受けていない医師もいるとされています。
さらに、開業医の場合診療は椅子に座りながら行うことも多く、勤務医のように広い病院内を歩き回ることもほぼなし。開業場所が自宅ならば通勤もほぼなしとなり、慢性的な運動不足に陥りやすい環境が整っていることになります。勤務医の頃よりも診療の間で休憩時間が確保されるため、十分な食事はとれるかもしれませんが、立つ、歩くなどの動作が極めて少なくなり、「動いていない」生活となるため、勤務医のころと同じ食事をとっていてはカロリー過多に陥ることも考えられます。
これらの環境が結果として医師を不養生へと導いているのかもしれません。

参考
※1 厚生労働省 医師の働き方改革に関する検討会 報告書 平成31年3月28日
※2 精神科治療学会

まとめ

医師の健康というと勤務医にフォーカスが当たりがちですが、開業医も勤務医と同様、心身の健康に問題を抱えがちです。特に開業医は、体調を崩せば診療行為ができなくなり、収入が途絶えることとなるため、結果として自身の生活に影響を及ぼす可能性もあります。
医師だからこそ、自身の健康には気を配り、早めの行動を起こす必要があるのかもしれません。

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