【連載第2回】相手の目を見て話す時間の違い-医師の常識・非常識

前回「医師の常識・非常識」をテーマに連載第1回目医師の常識は、一般人の非常識なのかで医師という職業と他の職業との違いを説明しました。
人とのコミュニケーションをとる上で目を見て話をするということはとても大切なことでしょう。その一方で、相手の目を見て話さない医師も多く、それが医師の間であたかも常識化のようにとられている一面も。今回は医師の「目を見て話す」という部分に着目していきます。

第1回目の記事はこちら

電子カルテの弊害?

かつては、3時間待ち3分診療などといわれた時代もあり、医師は患者さんをちらりと診てカルテに記入して終了、といった診療スタイルが多く見受けられました。しかし現在では、待ち時間の短縮や、診療時間の延長が図られています。それでも、医師の診療スタイルは相変わらず、電子カルテへの記入に時間をとられ、患者さんとの会話をする時間が短い、というのが現状のようです。
もちろん、「最初は入力作業に時間がかかったが、慣れてきたら入力が速くなり、患者さんとコミュニケーションをとる余裕が生まれた」という意見も聞かれます。医療情報は患者さんに求められたときに開示、説明を果たす責任があるため※1カルテへの情報入力は重要であるといえます。そのため、入力が早くなったとはいえ、患者さんとのコミュニケーションにかける時間は、紙カルテの時とほぼ変わらないというのが医師の正直なところなのかもしれません。
例えば、勤務医の場合はほかの職種もカルテを見るので「きれいな字で書かなければならない」という責務のような部分があり、電子カルテの方が逆に患者さんとのコミュニケーション時間を確保することができる、という医師もいるでしょう。※2しかし、開業医の場合は、患者さんのいる診療時間でなければ正確な情報を入力することは難しいですし、自分以外にカルテを見る人物も限られているため、本来ならば開業医こそ電子カルテとのにらめっこを避け、患者さんの目を見てコミュニケーションするための時間を確保すべきなのかもしれません。
具体的には、患者さんと目を見てコミュニケーションをとるために、医師の座る位置と患者さんの座る位置、そして入力画面の位置などを調整する必要が出てくるのかもしれません。あるいは、電子カルテに入力する専門の職員を配置するとか、医師の音声を認識してある程度入力補助をする仕組みを導入するということも、近年は増えてきているようです。

参考
※1 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」
※2 日本医師会 勤務医のページ「電子カルテは勤務医の味方か?」

先生、話し聞いてます?

一般企業では医療業界よりも早く、紙の書類から電子データへ置き換える取組みがスタートしています。一般企業は、面接の際にパソコンスキルを問うところも多くなっています。その結果なのか、パソコンにかじりついて仕事をしているという社員は少なくなり、会議中などであっても話をしながらパソコンを使いこなせる人が増えています。しかし、医療業界ではどうでしょう。未だ、医療情報としての記録の多くを、紙が占めているのが現状です。

患者と話しはしつつ、目は電子カルテに向き、目を合わせて話しをしてくれない(聞いてくれない)。これでは、患者から「先生、話し聞いてます?」といわれても仕方ないのかもしれませんし、いずれ医師の診察態度は、患者の不満となり、苦情となって噴出する可能性があります。
では、医師への苦情にはどのようなものがあるのでしょうか。 認定NPO法人 ささえあい医療人権センターCOMLが取りまとめている情報によると、患者からは次のような苦情が多くなっているようです。
・話を聞いてくれない
・説明不足、対応がいい加減
・話しや思いを聴いてくれない
・結果に納得いかない
・暴言・プライバシー侵害 ※3

このうち、少なくとも上から3つ目までは「医師と患者が相互に信頼関係にあり、お互いの目を見ながらコミュニケーションを取る」ことで回避できるのではないでしょうか。外来での診察の間、医師が電子カルテにかじりついており、患者の目を見ない診察を行うことは、患者に不満や苦情を与えることになります。これらは、患者の受療を継続するという行動を阻害し、かかりつけ医としての立場も危ぶまれることになります。※4

これが、一般企業での営業マンだとすると、どうでしょう。どれほど良い製品やサービスを扱っている企業でも、たちどころにモノが売れなくなるか、購入後の悪評につながる行為といえます。もちろん、医師は「売る」立場ではなく「患者の病気や怪我を治す」立場ではありますが、医師の側に少しでも「治してやる」という思いがあると、患者との間に認識の差が生まれてしまうのです。
このあたりが、医師としては常識的な考え方ではありますが、一般の人から見ると少しズレが生じているのではないでしょうか。

ただし、医師の診療に対する態度においては不満と感じている人よりも満足と感じている人の方が多く見受けられており※5現状としては、しっかりと患者さんのことを意識しながら診療を行えている医師が多いと捉えられているようです。

参考
※3 平成25年度国公私立大学付属病院医療安全セミナー 医療安全の基本はコミュニケーション
※4 厚生労働省 病院における患者満足度向上への取り組み
※5 平成29年受療行動調査(概数)の概況 結果の概要

まとめ

医師として正確な情報を確実に残すことは必要ですが、患者はそれよりも「医師」という存在が身近になった分、もっと話を聞いて欲しい、医師とのより良いコミュニケーションを取りたい、と感じています。
どうすれば、患者と上手なコミュニケーションが取れるのか、できるだけ長く患者の目を見て話すことができるのか。医師が、一般企業の営業マンに見習う部分も、あるのかもしれません。

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