「慕われるお医者さん」はかくあるべき?

医師として働いていく以上、やはり患者さんから慕われるかどうかというのは、大事なテーマです。慕われることで受診してくれる患者さんが増え、長い目で見れば経営の安定にもつながるかもしれません。今回はそんな慕われるお医者さんというテーマについて考えていきます。

お墨付きから折り紙付きへ

ここではまず、医師としてのお墨付き、折り紙付きという言葉について考えてみます。
お墨付きとは元々、室町時代や江戸時代に、幕府や大名から臣下の者に与えた「花押のある文書」を「墨付き」と呼んだことから、これに「お」を付けてさらに丁寧にした言葉です。今でいえば「押印付き公的文書」のようなものでしょうか。
一方の折り紙付きとは、そのものの価値や資格に定評がある場合に使われる言葉です。分かりやすい例でいえば、血統書付きの犬、鑑定書付きのダイヤモンドかもしれません。

医師に対してお墨付きという場合、多くの医師から「あいつは良い医師だ」と言われるような人物ではないでしょうか。それは医師本人の人脈や経験値などから導き出されると考えられます。同じ医師でも、大学病院に長く勤めていた医師の方が、早い時期に一般病院の勤務医になった医師やクリニックを開業した医師よりも、圧倒的に人脈は広いと推測できます。例えば大学の医局に入局し、診療科に関係なく100人単位の同期と出会うとします。この同期全員としっかりとコンタクトをとっていたとすれば、大学病院を辞めた後でも100人単位の医師の知り合いがいるということになります。中には医療の世界を退く人がいるかもしれませんが、それを差し引いても数十人前後の医師の知り合いがいることとなります。この知り合いの医師たちが、全国さまざまな場所で診療を行っていれば、これは大きな人脈といえます。先輩後輩、上司や教授など、非常に大きな人脈に支えられていることになるでしょう。

一方で、折り紙付きの医師とはどのような存在でしょうか。
前述の通り「折り紙付き」には価値や資格に定評がある、という意味があります。同じ医師でも「この医師の診察は安心できる」とか「この先生なら治してくれる」と思われるような医師と考えられます。つまり、医師として「お墨付き」であることに加え、医師の価値をさらにアップさせるような「信頼」が必要です。

例えば医療機関のWebサイトには、どれだけの経験を積んできたのか、どれだけの勉強をして専門医などの資格を取得してきたのかなどの情報が明記されています。
しかし、単に経験をあげれば患者さんが付いてくるかというと、実はそうでもありません。患者さんが医師に対して信頼するポイントは、患者さんに配慮した診察を行っているか、親しみやすい医師であるかどうかの方が、医師としての権威や外見的な要素よりも高い、とする研究結果があります。
一方で、医師に対して不信となる要因は、医師の医学的能力に関する要因、医師の態度や言動、医師と患者の感情やコミュニケーションによるもの、とされています。※2

大人気!!もしもし先生

では、折り紙付きの医師、患者からの信頼が厚い医師とは、どのような医師なのでしょうか。

患者さんの中にはかかりつけ医の顔を見たら急に体の具合が良くなったという人もいます。実際に診察をしていても、体調不良を訴えて受診された割には、少し話をしただけで調子が良くなったと帰宅される患者さんに出会った経験のある医師は、少なくないのではないでしょうか。
さらに、もしもし先生という言葉でも表現されるような、聴診器を胸に当てて「元気ですね」と一声かけるだけの医師。でもその一言で元気になって帰られる患者さんも、実際にいます。これこそがまさに信頼関係の力です。

もちろん、信頼できる医師の基準は人によって異なりますが、ある病院で患者さんにアンケート調査を行ったところ、責任感がある、人柄がよい、専門的知識・技術を身につけている、説明を十分に行ってくれる、話しやすいなど、様々な意見が出てきました。※3
この結果の中でもしもし先生に通じるとしたら、医師の人柄というところではないでしょうか。医師を信頼できないという患者さんの多くには、医師のあら捜しをしたり、積極的なコミュニケーションをとらなかったりということがあります。※3

しかし、医師の方から積極的にコミュニケーションをとり、医師としての知識や技術を提供し、親身になって患者さんに接するならば、あら捜しやコミュニケーションを敢えて取らないような行為をされることなくなり、結果として患者さんからの信頼を得ることにつながるのではないでしょうか。
また、日本訪問診療機構はかかりつけ医の選び方として、次のようなポイントを挙げています。

・話をよく聞いてくれて信頼感が持てる
・相性がよく共感できるタイプである
・病歴、家族歴などをくわしく聞いてくれる
・データに頼りすぎず患部もきちんと診てくれてわかりやすい言葉できちんと説明してくれる
・患者の言いなりにならない
・勉強熱心で情報収集に努めている
・診断がつかないときは「わからない」と言える
・患者を抱え込まず、速やかに専門医に紹介してくれる
・万一の場合の緊急時対応について指示してくれる

としています。※4

たとえ、前述したような親身になったコミュニケーションが苦手だという医師も、これらの条件を満たすことができれば、もしもし先生のような「患者さんから信頼される医師」となることができ、慕われる医師、折り紙付きの医師へと評価をアップさせることができるのではないでしょうか。

まとめ

患者さんから慕われるということは本来、決して難しいことではないはずです。医師として然るべき態度をとっていること、患者さんの気持ちに寄り添うことができれば、自然に慕われる医師、折り紙付きの医師へとランクアップしていくでしょう。かかりつけ医として患者さんから認められ、長い付き合いができる患者さんを増やすことは、医療機関の経営的にもプラスになるはずです。折り紙付きの医師への第一歩を、踏み出してみてはいかがでしょうか。

参考:
※1 医師に対する信頼の観点からみた日本の患者タイプの特徴
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jahp/21/1/21_1/_pdf

※2 豊かな患者-医療者関係を目指すには
https://i.kawasaki-m.ac.jp/jsce/jjce25_1_1.pdf

※3 静岡県立静岡がんセンター 信頼できる医師
https://www.scchr.jp/cancerqa/kjyogen_10008.html

※4 日本訪問診療機構 医師の選び方、見極め方
http://jvmm.jp/houmon-points.php

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