巷の「名医」と、本当の「名医」の違い

名医と聞くとどのような印象を持たれるでしょうか。最近では名医を並べた番組なども多く、名医という言葉が過剰に使われています。今回はこうした「メディアの名医」もさることながら本当の名医とはどんな医師であるのかについて考えていきます。

患者から見た「名医」は、メディアに登場?

近年メディアでよく見る名医という言葉ですが、名医という言葉には、「優れた医師、有名な医師」という意味があります。※1
では巷での「名医」とは、どのような基準で選定されているのでしょうか。これは名医と紹介する媒体によって、色々と違いがあるようです。
例えば、とある名医を紹介するサイトにおいては、名医の選考について「評議員が自身や家族が入院・手術を必要とする際に、お願いしたいと思える専門医。選考される医師は患者・医師から信頼される高い専門性を持つこと。さらに現役の臨床医であり、患者の立場で治療する人柄」としています。※2
美容外科の分野においては経歴や所属、治療方針、宣伝方法など名医の基準が細かく決められているところもあるようです。 ※3
また、とある名医を紹介する雑誌においては医師に名医として紹介することを打診し、雑誌を出版する会社に支払う掲載料によって、掲載される記事の大きさが変わってくるというところもあるようです。

このようにさまざまな名医の基準がありますが、医師の立場からみた名医とは何でしょうか。

例えば、日本医師会が地域に貢献する医師を表彰する赤ひげ賞というものがあります。これは、平成24年に創設され、毎年5人の医師が日本医師会から表彰されています。※4
日本医師会という、医師だけではなく広く一般にも知られている公的な団体が表彰するのですから、これも立派な「名医の証」ではないでしょうか。しかし、実際にここで表彰された医師のすべてが、テレビなどのメディアで「名医」として引っ張りだこになっているかというと、実はそうでもありません。

医師の世界ではなく、患者さんの世界から見ると、やはり「メディアに良く出てくる医師の名前は知っている」ということもあるでしょう。しかし何代にもわたって地域に寄り添い、本当の意味で地域医療に貢献し、てきた医師も、名医といえるのではないでしょうか。メディアや雑誌などで見られる名医が、患者から見た本当の名医であるかどうかは、患者さんが判断することなのかもしれません。

本当の「名医」は、地道な努力と経験

それでは、本当の名医とはどのような医師のことを言うのでしょうか。これを考える上で注目したいのが、ここ数年の「クリニックの傾向」です。
近年、専門分野に特化したクリニックが増えてきています。その理由としては、初期費用の圧縮など経営面もさることながら、スペシャリストという評価を確立できるというところにあるようです。※5 自分の得意な分野での診療を毎日行っていれば、当然ながら技術や知識については、患者さんからも良い評価となるでしょう。また、診療内容も特化している分、医師側にも余裕が生まれてくるため、患者さんとのやり取りにも余裕が生まれるかもしれません。さらに、たくさんの論文や資格は、名医としての知識やスキルの証明にも値します。クリニックを開業するまでに何を学び、どのような診療を行ってきたのか。これを院外に向けて伝えていくならば、こうしたことを自院のWebサイトに掲載することは、良い宣伝効果が期待できます。

しかし、患者さんが選ぶ名医は、必ずしもこうした経歴だけではありません。とある2人の医師のケースをみていきます。

<A医師>
町の名医として有名となったとある開業医。消化器や循環器の診療を得意とし、特に消化器系の経内視鏡的胃ろう造設術に関しては、全国的にも高い評価を受けている医師です。数々の本を出版し、医学生の受け入れや講演活動も精力的に行っています。※6
しかし、患者さんたちがA医師を「名医」と評するのは、それだけではありません。患者さんの話には物腰軟らかくきちんと耳を傾ける医師であり、その診療態度が患者さんたちから慕われているポイントです。※6
もちろん、A医師の経歴や医師の世界からみた評価だけでも、申し分ないほどの名医かもしれません。しかし、患者さんの間で名医と評されているのは経歴や評価に加え、A医師の診療態度によるところが大きいようです。

<B医師>
ある大学病院で患者さんたちからの信頼が厚く、「名医」と呼ばれた医師です。比較的最近、メディアにもニュースとして挙がっているので、ご存知の方もいるかもしれません。
全国から患者さんを集めた名医が大学病院を追われてしまう、そしてこの名医を助けようとしているのもまた、患者さんたちなのです。「この先生に治療してほしい」そう願う患者さんたちが患者会を結成し、訴訟を起こしています。※7

名医と呼ばれる存在と、患者さんとのつながりには、密接な関係があります。名医が名医であり続けるためにじは、患者さんの存在が必要不可欠なのかもしれません。実際、大学病院の勤務医が自ら開業する時、患者さんを引き連れて独立するというのも、よくあるお話しです。
名医と慕う患者さんがたくさん集まってくるためには、医師自身も地道な努力と経験を積み重ねていくことが、必要なのかもしれません。

まとめ

名医の定義はさまざまで、特に雑誌やメディアに掲載される名医については、その評価基準もあいまいなところ。しかし、多くの患者さんが名医と慕う医師は、本当の意味での名医なのかもしれません。

参考:
※1 デジタル大辞泉
※2 ティーペック株式会社
※3 美容格差時代 進化する美容医療、その光と影
※4 日本医師会 赤ひげ大賞
※5 幻冬舎 専門分野に特化したクリニックが増えている理由
※6 小川医院
※7 朝日新聞

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