他クリニックの一歩先を行く差別化経営

医師として、いずれクリニック経営を考える方もいることでしょう。集患を考えると、交通の便が良い立地は魅力的ですが、その結果、駅前にはメディカルモールが建ち並び、狭い範囲に同じ診療科のクリニックがひしめき合うことになります。
過疎地やへき地などは別として、地方でも比較的人口の多い地域では、2km圏内に同じ標榜科のクリニックが複数あるのは、決して珍しいことではありません。
その中で集患のために他クリニックと差別化を図るにはどんな方法があるのでしょうか。

コンビニより多いクリニック

日本の医療機関の数は、他国と比較して非常に多いと言われています。
世界各国のさまざまな統計データをまとめて比較したOECD健康統計2018によると、日本の病院数は8442施設で、2位アメリカの5564施設を大幅に上回るダントツの1位となっています。

これは日本国内なら「誰でも・どこでも・いつでも」医師の診察を受けられるフリーアクセスの仕組みが整備されていることも大きく関わっているでしょう。

クリニックや診療所についても、その数は内科、眼科、皮膚科、整形外科などすべての診療科を合わせると、全国で10万施設を超えています。

一方、国内にあるコンビニの店舗数は、主要7社の合計で5万5000超。クリニックは診療科ごとに分かれているので、普段はそれほど数が気になることはありませんが、こうしてコンビニと比較するとクリニックがいかに多いかわかりますね。

同じ地域にある同じ診療科のクリニック

人口の密集している都市部には、クリニックが集中する傾向が見られます。一例として、東京で住みたい区として人気の世田谷区では、合計850ものクリニックがあります。そのうち内科は476施設、小児科は178施設、皮膚科は146施設、眼科は87施設となっており、東京23区内でも最もクリニックの多い地域となっています(東京都調べ)。

一方、世田谷区の倍近い面積を持つ青梅市のクリニック数は92施設。そのうち内科は73施設、小児科は21施設、皮膚科12施設、眼科5施設(複数診療科を標榜している場合がある)と、その数はかなり少ないのが現状です。

世田谷区は人口が青梅市の6.8倍で、交通も発達しており、世田谷では十分な集患が見込めることから、クリニックが開業しやすのかもしれません。

こうして他のクリニックに差をつける!

しかし利便性が高く、人が多い立地であるほど競合クリニックは多くなります。その中で患者が来るクリニックにするには、どんな方法があるのでしょうか。具体例を見ていきましょう。

■診療内容で差をつける
診察の時は、患者の心情に配慮した丁寧な説明を心がけることはもちろん、検査機関と連携して慢性疾患などマイナーな検査にも対応できる体制を整えておくのも差別化の有効な手段です。
また、経鼻内視鏡による胃カメラ検査ができる消化器内科、手の外科手術(日帰り)に特化した整形外科など、習得に時間のかかる技術を身に付けることも大きな強みとなります。
患者さんから見れば、大学病院と同等の検査や治療が受けられるのは、大きな強みです。

■医療機器で差をつける
医師が得意分野で活用できる医療機器は、集患の重要なアピールポイントです。
とはいえ、高額な医療機器を導入するには、コストとそれを回収できる集患が可能かどうか、費用対効果を慎重に見極めなくてはなりません。地域住民の性別・年齢構成などを勘案してニーズを検討すると同時に、近隣に同様の機器を持つ医療機関がある場合は、競合する機器を避けて別のものを導入するなど、十分な調査・検討が必要になります。

■WebサイトやITシステム導入で集患する
患者の待ち時間が短縮できるWeb予約システムや、処方箋を医院から送付して待ち時間なしで薬を受け取れる医薬連携システムの導入は、忙しい患者さんにとってクリニックを選ぶひとつのきっかけになります。また、医師が自クリニックのWebサイトで疾患などに関する医学知識を公表し、患者さんが有益な情報を得ることができれば、クリニックの認知度も高くなります。SNSは、診察時間の変更や空き状況の告知、流行している疾病の予防策などの臨時的な情報発信に向いています。

■得意な分野を生かし合う診診連携
最後に重要なのが、他のクリニックと協力し合う診診連携(診療所同士の連携)です。
ある産婦人科クリニックの例を見ていきましょう。このクリニックでは、産前産後の皮膚トラブルには女性の皮膚科専門医が開業しているクリニックを、メンタルの不調や不安を抱える妊産婦には近隣の心療内科クリニックを紹介しました。その結果、産婦人科医は専門外の診療から解放され、専門診療に専念できました。さらに診療情報を互いに共有し合うことで、より質の高い医療を提供することが可能となりました。
また、Aクリニック(消化器内科)とBクリニック(脳神経外科)が、内視鏡検査とMRI検査をお互いに依頼し合うならば、機器の導入・維持にかかる高額な費用や人件費を大きく下げることができます。患者は遠い大病院で長時間待つことなく近所で手軽に検査を受けられ、クリニックも検査データを共有することで共存共栄を図ることができます。

まとめ

同じ診療科の中でも専門が分かれている現在、集患で大切なのは、クリニックが患者を奪い合うのではなく、医師がそれぞれのクリニックの強み・弱みを共有して、互いに補完しあい、協力し合うことかもしれません。
結果的に、医師は一人で患者を抱え込みながら専門外の診療を行う不安から解放され、効率的に質の良い医療を提供できます。患者さんにとっても、自宅や職場の近くで治療できるメリットは大きいはずです。
そして他クリニックで既にやっていることでも、改善や工夫を取り入れていくことで、患者さんにとって利用しやすい診療所に近づいていきます。その積み重ねがやがて、すぐには真似できない他との差別化につながっていくのではないでしょうか。