これからの医師に求められる役割とは?

医師という職業は、誰でもなれるものではありませんし、医療者からすれば、やはり医療機関の中で診療や治療を行う上では、絶対的な存在です。
しかし、患者さんからみた現在の「医師の姿」はどうでしょうか。
「病気やケガを治してくれる」という大きな役割の他にも、期待されている役割があるのかもしれません。

かつての日本 お医者様の時代

かつての日本の医師は、「お医者様」という絶対的な存在でした。「医師」という職業は、江戸時代には確立していたようです。ただし、医師になるための特別な資格は無かったため、「名乗ったもの勝ち」の世界でした。当然ながら医療費もまちまちで、いわゆるヤブ医者も多かったようです。

日本の医師の「国家資格」は、1946年に行われた第一回医師国家試験から始まりました。それ以前は「医術開業試験」と呼ばれる、「診療所を開業するための試験」がありました。

これらの試験は、事実上は独学でも受験可能だったとされていますが、それでも誰でもが思いつきで受験できたものでありませんでした。医師として働くためのたくさんの知識や経験が必要とされ、だからこそ「お医者様」と呼ばれ敬われてきました。かつては、医師に「こうしなさい」といわれれば、患者さんはみなその言葉に従い、ケガや病気を治す努力をしてきたと考えられます。

現在も、患者さんが治療に自ら向かい合う必要があることに、変わりはありません。ただし、一人の医師の「こうしなさい」が絶対ではないというところが、昔と今との違いなのかもしれません。

これからの医師は「垣根」が不要?

周知の通り、現在の日本は世界でも例を見ないほどの勢いで、超高齢化社会の道を突き進んでいます。2017年10月現在での高齢化率は、27.7%。それから1年が経過していますから、今はもう少し高齢化率は高くなっているのではないでしょうか。

高齢化率が高くなればなるほど、患者さんに占める高齢者の割合も高くなり、小児科や産科など一部の診療科を除けば、「(通院している)患者さんの平均年齢が70歳以上」というようなクリニックも、世の中には多く存在しているでしょう。

さらに、高齢になると増えてくるのが、不定愁訴。「何となくだけど調子が悪い」という場合、患者さんはまず、かかりつけ医の内科医を受診するかもしれませんが、原因があるなら早く見つけたいと願うでしょう。近年は情報過多の時代といわれ、スマホやパソコンを開けば、さまざまな情報が手に入ります。こうした情報を元に、適切とは言い難い診療科を受診したり、「医師のくせに(病状が)分からないのか!」と怒り出す患者さんも少なくありません。

人は高齢になると、自分の「症状」を上手く伝えられなくなったり、ほんの少しの体調の変化に対する負の感情が目立つようになります。さらに独自の世界観で「自分はこの病気に違いない」という思い込みによる受診も、後を絶ちません。

こうした背景の中、ここ数年ニーズが高まっているのが「総合診療医」です。患者さんのニーズを満たし、よくある疾患に対応し、多くの医療者と連携し、「自分にとって頼りになる医師」。今のところはまだ、一般にはこの名称は浸透していないかもしれませんが、実際に総合診療医が増えれば、患者さん側の認識も広まっていくのではないでしょうか。

患者さんから見れば「とりあえずは何でも診てくれる医師」が、これからの日本には必要とされているのです。

今さら聞けない 医師にとっての「パラダイムシフト」って?

「パラダイムシフト」という言葉を辞書で引くと「社会の規範や価値観が変わること。ある時代や集団を支配する考え方が、非連続的、かつ、劇的に変化すること。」という主旨のことが書かれています。産業界ではこれまでの「産業革命」が一つのパラダイムシフトだったと考えられます。

では、医療業界はどうでしょうか。

厚生労働省は2015年6月に「保健医療2035提言書」を公表しました。この中にも「パラダイムシフト」が謳われており、厚生労働省は現代の日本が抱える様々な課題を、次の様に転換すべきである、としています。

・量の拡大から質の改善へ
・インプット中心から患者にとっての価値中心へ
・行政による規制から当事者による規律へ
・キュア中心からケア中心へ
・発散から統合へ

単に保健医療の制度そのものを維持するのではなく、社会全体の文脈のなかで方向性が決定付けられるものであり、新たな「社会システム」としての保健医療の再構築が必要、と明示しています。

特に現代は、「元気で長生き」が目標とされており、疾病の治癒と生命維持を主目的とする「Cure」から、慢性疾患や一定の支障があってもQOLを維持・向上させる「Care」に重点を置いた医療が、求められているのではないでしょうか。

こうした背景を考慮しても、前述のような「総合診療医」のニーズは、ますます広がっていくと考えられます。

まとめ

時代の流れとともに、「医師」に対する期待や、社会の中での役割も変わりつつあります。医師に対して、一定以上の尊敬の念を抱く患者さんの方が、まだまだ多いとは考えられますが、かつての「お医者様」から、「健康上のことを何でも相談できる医師」へと、そのニーズは変わってきているのかもしれません。

今後は「どれだけ多くの患者さんの人生に寄り添えるか」が、選ばれる医師の条件に加わるのではないでしょうか。