進化している医師確保対策。キャリアアップを目指すなら地方勤務!

高齢化を背景として、在宅やへき地などで、年々ニーズが高まっている地域医療。しかし需要の高まりとは裏腹に、地域医療は慢性的な医師不足に悩まされています。

厚生労働省は、2018年度から医師の働き方改革と合わせて、医師の地方勤務を後押しする施策を次々と打ち出しています。これから地方に勤務する医師は、どんな働き方ができるようになるのでしょうか。新しい施策をひもときながら見ていきましょう。

医師の偏在、実際のところはどうなっている?

医学部の入学定員増加によって、この10年間で国内の医師数は年々増加してきました。しかし都市部に医師が集中し、地方では医師が不足している傾向は以前から変わらず、その格差はさらに広がっています。

全国的な傾向を見ると、西日本側は人口10万対医師数が多く、東日本は少ない傾向が見られます。また東京・京都・大阪・神奈川など医師養成機関の多い大都市は医師数が多い一方で、首都圏でも埼玉・茨城・千葉など医学部が少ない県は、人口10万対医師数が全国でも最低レベル。最も少ない埼玉県の人口10万対医師数は152.8人で、最も多い京都府の307.9人に比べて半分以下となっています。

さらに二次医療圏について見ていきましょう。2008年度と2014年度の人口10万対医師数を比較した厚生労働省の分析によると、大都市の医療圏は、10万対医師数が10%以上増加している医療圏が約半数を占めています、その一方で、過疎地医療圏のうち10万対医師数が10%以上増加しているのは約5分の1に過ぎず、減少している医療圏の方が約4分の1と多くなっていました。また、各都道府県の中で二次医療圏別の人口10万対医師数の最大値と最小値の差を比較したところ、36都道府県で、地域による医師数の格差が拡大していることが分かりました。

こうした現状を受けて、国は単純に医師数を増加させるだけではなく、医師の多い区域と少ない区域を地域単位で把握できる指標を導入すると共に、地域偏在の解消に向けてより実効性のある施策が必要となりました。

医師はなぜ地方に行きたがらないのか

厚生労働省が2017年にまとめた「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」によると、全国の医師のうち、地方(東京23区・政令指定都市・県庁所在地などの都市部以外)で勤務する意思がある医師は44%でした。さらに「地方で何年勤務する意思があるか」との問いには50%近い医師が「(短期間でも)意思なし」と回答(回答は50代以下の勤務医)。

地方勤務をしない理由として、すべての世代が「労働環境」や「希望する仕事ができない」ことに不安を持っていました。

実際、医師数が多い都市部の大病院では、設備が充実して患者数も多いため、専門領域の臨床経験のキャリアを積みやすいと言えるでしょう。一方、医師の少ない地方では、専門外の診察が増えて十分な専門の臨床機会を確保できない上、代診を確保できないために学会や研修ですら診療を休むのが困難という地域も少なくありません。

また、不安の内容を年代別にみると、

・20代:医局の人事で選択の余地がないことや専門医取得への不安など、キャリアパスに関するもの
・30~40代:子供の教育環境や家族の理解が得られないなど家族の事情
・50代:すでに都市部で開業している、家族の理解が得られないなど
が主に上がっています。既婚者が多くなる30代以上では、ライフスタイルに関わる要因が上位に上がってくるのが特徴的です。

地方のニーズに応えてキャリアアップを目指す

これまでの各都道府県の医師確保対策は、医療計画での記載が統一されておらず、法に定められた医師確保対策である「地域医療対策」も17県で未策定。医師を養成する大学と都道府県の連携も不十分で、主体的に対策を実行する体制が整っていませんでした。

こうした事情を踏まえて厚生労働省は、地域の実情に合った実効性のある具体策を明示する「医師確保計画」の策定を、各都道府県に指示しました。そして各都道府県内に生じている医師の偏在を可視化できる指標を作り、県内で医師が多い地域から少ない地域へと医師が配置される取り組みや代診医の派遣、医師同士の遠隔相談といった診療支援など、医師が少ない地域でも勤務するための環境整備を、大学医学部や大学病院と連携して推進していく方針です。

また、地域医療での診療経験をキャリアにつなげる「総合診療専門医」を新たな基本領域の専門医として加え、さらに認定医の資格を一定の医療機関の管理者に求められる「評価基準」の一つにすることも検討されています。

これまで敬遠されてきた地域医療ですが、今後はより働きやすく、医師にとっても条件の良い魅力的なものへと変わりつつあるようです。

まとめ

深刻な医師の偏在を解消するため、医師が地方勤務に魅力を感じる施策へと大きく舵を切った厚生労働省。各都道府県も都市部以外の地域に医師が安心して勤務できる体制を整えるべく、さまざまな工夫をしています。ITの普及によって、医療サポートや最新知識のキャッチアップが以前より容易になっていることも、地方勤務の医師にとってはキャリア形成のしやすさや働きやすさへと繋がっています。次回以降は、医師を求める県の医師確保政策について、その内容をより詳しく見ていきましょう。