これも必要経費?医療廃棄物の扱い方

開業する上で知っておきたい問題でもある、医療機関のゴミ=医療廃棄物問題。特に勤務医の場合、医療廃棄物は看護師や病院側がすべて片づけてくれていたため、さほど意識せずに過ごしているものではないでしょうか。今回は開業する上で知って起きたい医療廃棄物の取り扱いについて考えていきます。

今さらだけど知っておきたい廃棄物の取り扱い

まずは医療廃棄物の取り扱いについて、改めて考えてみましょう。
医療廃棄物とは、医療関係機関等において医療行為等に伴い生じた廃棄物の通称であり、法的な用語ではありません。
医療廃棄物はさらに、感染性廃棄物と非感染性廃棄物に大別されます。

感染性廃棄物は、「医療関係機関等から生じ、人が感染し、若しくは感染するおそれのある病原体が含まれ、若しくは付着している廃棄物又はこれらのおそれのある廃棄物」と定義(※1)されている廃棄物のことで、非感染性廃棄物はこれ以外の感染の可能性がない廃棄物のことを言います。

医療廃棄物の処理方法はこの感染性と非感染性で異なります。感染性廃棄物は施設内処理と処理の委託という方法があります。施設内処理とは、焼却施設を用いて焼却したり溶融設備を用いて溶融したり高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)装置を用いて滅菌するほか、加熱処理するなどの方法があり、廃棄物によってその方法は異なります。
一方、「処理を委託する」方法は、適法な許可を有する処理業者に処理を委託するという方法です。非感染性廃棄物には、感染性はないとされるものの、医療機関から出される「産業廃棄物」という扱いになるため、一般ごみとしての廃棄はできません。こちらも、業者への処理の委託が一般的な処理方法です。

医療廃棄物の量は、手術などの観血的な処置をするか否かによって大きく異なります。手術を行う場合、メスなどの医療器具に加え、血液汚染された感染性廃棄物が大量に出ることとなります。そのため、開業した医療施設で手術などを行うことを考えている場合には、施設内処理はかなりの負担となることが予測されます。

尚、ここでいう「医療機関等」には次のような施設が含まれています。
・病院
・診療所
・衛生検査所(臨床検査技師等に関する法律第 20 条の 3 第 1 項)
・介護老人保健施設(介護保険法第 8 条第 28 項)
・介護医療院(介護保険法第 8 条第 29 項)
・その他環境省令で定めるもの
・助産所
・獣医療法第 2 条第 2 項に規定する診療施設
・国又は地方公共団体の試験研究機関(医学、歯学、薬学及び獣医学に係るもの)
・大学及びその附属試験研究機関(医学、歯学、薬学及び獣医学に係るもの)
・学術研究又は製品の製造若しくは技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究を行う研究所(医学、歯学、薬学及び獣医学に係るもの)

こうしてみると、医師が働く可能性のある施設は、おおむね「医療機関等」に含まれているのではないでしょうか。つまり、医師や医師と一緒に働く人が出すゴミの多くは、「医療廃棄物」として扱われることになります。

また、「医療廃棄物」の中には、針や注射器などの医療器材もあります。これらを使用すれば間違いなく感染性廃棄物ですが、針などの鋭利なものは、未使用あるいは使用済みで消毒等の処理をしたものであっても「感染性廃棄物」として処理することになりますので、例えば「滅菌期限が切れた針付き注射器」などは感染性廃棄物になります。

もしも、廃棄物の処理が不適切だったら

それでは、もしも廃棄物の処理が不適切であった場合、どういったことが起こりうるのでしょうか。
特に気を付けたいのが「地域住民の目」です。
一般的なごみであってもため込んでしまうと、臭いなどによる住民同士のもめごとが起こるわけですから、「感染性廃棄物」であればなおさらのことでしょう。地域住民が不快感を示せば、医療機関の経営すら危うくなる可能性があります。そのため感染性廃棄物については、公衆衛生上の観点においても地域住民等の健康を損なわないように適正に処理することが必要となります。

廃棄物の処理が不適切であった場合、誰の責任となるのでしょうか。
もちろん、最終的な責任者は開業している医師自身です。しかしながら、責任への「関係者」は、スタッフ全員となります。廃棄物の処理が適切でなかったがために、法的措置を取られざるを得なくなるという場合もあります。
例えば、感染性廃棄物専用容器の破損や針の貫通によって処理業者がけがをしてしまった場合は民法上ですが、「処理業者に対する債務不履行責任(民法415条)」や「処理業者及び作業員に対する不法行為責任(民法709条)に基づく損害賠償義務」が発生する場合があります。万が一、感染性廃棄物が原因で死に至るようなことがあれば、病院の担当者に業務上過失致死傷罪(刑法211条)が成立し、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金刑に問われる場合があります。

これらの刑に対する責任はすべて、開業している医師が被ることとなります。
産業廃棄物、医療廃棄物の処理を怠ることで職場だけでなく資格を失ってしまうことにもつながりかねません。たかがゴミと侮ることなく、経費をかけてでも医療廃棄物の処理を怠らないようにすることが、賢明な対策といえます。
また、もしも委託した廃棄物処理業者が不法投棄をした場合、医療機関へ廃棄物の撤去命令が出されるほか、これに対する懲役刑や罰金刑を被る可能性もゼロではありません。信頼できる廃棄物処理業者を見つけることも、開業するにあたっての医師の大事な仕事であるといえるでしょう。

参考:
※1 東京都環境局「感染性廃棄物を適正に処理するために」
※2 環境省「医療機関からの廃棄物の処理にかかるプロジェクトチーム報告書の送付について」
※3 東京都産業廃棄物協会「病院などの医療機関から排出される感染性廃棄物等の適正処理についてのお願い」
※4 日本医師会「医療機関には、排出事業者としての責任があります」

まとめ

医療廃棄物の処理方法を誤ると、廃棄物処理業者だけでなく廃棄物を出した医療機関およびその個人にも、責任が課せられることとなります。医師の立場からすれば「毎日出される、ゴミ」ではありますが、対応を怠ることなく、費用を算出して信頼できる廃棄物処理業者を見つけることが賢明といえるでしょう。

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