増え続ける医師、生き残るのはどんな医師?

一昔前まで医師の数は少なく貴重な存在でしたが、現在医学部の定員増加に伴い医師は増え続けているといいます。そうするとこれからは生き残るための得策を考える必要性が出てきます。医師が増加している現在で生き残れるのはどのような医師なのでしょうか。

医学部の定員はどう変化してきたか

まずは、医師を輩出する養成校であり、医師数の増減に最も関係している医学部の定員がどのように変化してきたかを見てみましょう。
現在の医学部の入学定員は過去最大にまで増員されています。これは2012年に決定されたものがそのまま維持されているためで、2019年までの7年間をかけて、医学部の定員を増やしていこうという取り組みによるものです。
医学部増員枠の内訳をみると、地域枠と呼ばれる「各都道府県と当該県内外の大学が連携し、地域医療を担う医師を養成するための定員増」が39名分、研究医枠と呼ばれる「研究医を養成するための定員増」が9名分、歯学部振替枠と呼ばれる「歯学部入学定員を減員する場合に認められる定員増」が2名分となっています。
今が最も多い医学部の定員枠ですが、実は過去にも数回の増員がありました。
まずは2006年の「新医師確保総合対策」により、医師不足が深刻とされている青森、岩手、秋田、山形、福島、新潟、山梨、長野、岐阜、三重の都道府県について各10人の増員がありました。さらに平成2007年の「緊急医師確保対策」により、全都道府県について原則として各5人の入学定員を増員しています。これに加えて「経済財政改革の基本方針2008」を踏まえ、2009年の入学定員をさらに増員しています。
このように増員を繰り返していった結果、2018年までの約10年間で約1600人もの医師が増加していきました。

少子高齢化と医師数増加の関係

なぜ日本は、医学部の定員枠を増加して医師数を増加させていったのでしょうか。これには少子高齢化が深く関係しています。
2016年の日本の高齢化率は27.3%ですが、これは今後もどんどん増加していくことが見込まれており、2060年には39.9%にまで増加していくと予測されています。
日本の少子高齢化は医療業界にも影を落としています。日本社会が少子高齢化すれば、高齢者の医療需要が高まります。その一方で、診療に当たる医師も高齢化しているため、希望に沿う診療を行えない可能性が出てくるのです。
特に高齢化が懸念されているのが診療所などの開業医、なかでも地域医療を担う医師たちです。
診療所医師の年齢が70歳以上であるというところは多く、地域によっては診療所医師の4人に1人が70歳以上というところもあります。医師が高齢化すると、フットワークの低下や稼働率の低下にもつながり、その地域における実質的な医師不足が懸念されていきます。
こうした「医師が高齢化している地域」の医師労働力不足を解消するために、前述の通り医学部定員に地域枠を設けるなどして増員し、地域偏在の解消に取り組んでいった結果として、医師数がどんどん増え続けてきたという背景があります。
高齢化はまだまだ続いていくことから、これ以上医師の高齢化や地域での医師の偏在が続けば「医学部定員の枠が広がり医師数はますます増加」と考えるところですが、医師数が増加したことによって早ければ2024年頃、遅くとも2033年頃には需要が均衡し、今度は「医師過剰」になると予測されています。これは、2016年に厚生労働省が「医師需給分科会」にて、推計結果として報告しています。

さらに増やして、次は減らす

では、今後の医学部定員は、どうなるのでしょうか、
2018年に行われた「医療従事者の需給に関する検討会」と「医師需給分科会」の合同会議において、今後の医学部定員に関する方向性が示されました。これによると、
・2021年度までは現状を概ね維持
・22年度以降は「減員に向けた議論が必要」
と、あくまでも暫定的ではありますが、これが現在の国の方針なのです。過剰になることを見越しつつあと数年は「増やす」が、それ以降は「多分、減らすかも」という、先が見えないのが実情です。
したがって今後の医師数は減っていく可能性があるもののまだ暫定的方針のため、少なくともあと数年は医師数が増加していくという見通しとなっているのが現状なのです。

まとめ

今現在、医師として働く方にとっては、医師数の増加が続く現代において生き残っていくためには、「医師としての労働力」が必要とされているところで働く、というところがポイントです。一般企業であれば当然のことではありますが、これまでの医師の世界とは少し違うかもしれません。自分がやりたい医療を取るか、医師が高齢化して「医師の労働力」が減っている地域や診療科で働くか。
医師としての働き方を、考える時かもしれません。

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